子どもの社会参加促す 一方で政治教育タブー視も
学校での模擬投票が増えているのはなぜか。
「シティズンシップの教育思想」の著者の小玉重夫・お茶の水女子大助教授(教育学)は、こう見る。「『子どもの権利条約』で子どもの学校・社会参加や自己決定権が重視され、『総合的な学習の時間』で市民的資質をつける試みが注目されるようになったのが要因。学校で社会の模擬的な経験をさせる教育は、模擬裁判など司法分野でも進んでいる」 一方で、今回投票を計画しながら見送ったり、実施を公表しなかったりした学校もある。「投票は政治的中立を侵すと校長に注意された」(東京都)、「候補者の関係者がいたらまずいと同僚に言われた」(横浜市)、「親のクレームに対処しきれないと管理職が判断したので公表できない」(兵庫県)。「Rights」の参加校32校中、名前を公表しないのは14校にのぼる。
「冷戦構造の下、当時の日教組との対立や60~70年代の学園紛争の高まりから旧文部省が政治教育に歯止めをかけ、学校が政治を扱ってはならないとする教育文化がつくられてきた。それがまだ根強く残っている」と小玉助教授は見る。「欧米諸国は90年代以降、自立した市民を育てるシティズンシップ教育に取り組んでいる。日本も大きく踏み出す時期に来ているのではないか」と話している。
朝日新聞 2005年9月11日 朝刊・教育欄 part.2