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改革は進むか 05衆院選5
閉幕まで一ヶ月を切った愛知万博(愛・地球博)。夏休み後半、子供に人気のパビリオン「モリゾー・キッコロメッセ」は社会資本の重要さを訴える催しの舞台になった。
主催したのは建設業界が組織する日本土木工業協会や国土交通省などだ。映像技術や人気キャラクターを使って、国土づくりには高速道路や空港がまだ欠かせないという説明が続く。「純真な子供は第二東名をぜひとも完成させなければならないと信じ込んでしまう」。小学生の息子と訪れた母親の感想だ。
日本は人口減少の世紀を迎えた。平均寿命が女性より短い男性の数は昨年が頂点だったとみられる。二〇三〇年の総人口はいまより一千万ほど少なくなる。四十万年が毎年ひとつずつ消滅する計算だ。そんな未来に向けて道や橋を造り続けることは、将来世代への負担転嫁を意味する。
人口構造の大転換期に重なったこの衆院選で、現世代の投票行動が次世代の選択肢を狭めることは許されない。
多産多死社会から少産少死社会に移る過程で、高齢者と子供がともに少なくなり、生産年齢人口が相対的に増える現象を人口ボーナスという。労働力は無尽蔵だという錯覚に陥り、経営者は思い切り賃金を抑える。一九六〇年代の高度成長を支えた要因のひとつだ。
道路や新幹線の建設が本格化したのもこの時期だ。合言葉は「国土の均衡ある発展」。人口ボーナスが族議員、建設官僚、業界の持ちつ持たれつの関係を強固にした。それから半世紀。日本は人口オーナス期に差しかかった。オーナスとは英語で重荷の意。生産年齢人口の急減と高齢人口の急増とが同時進行する現象だ。
政策や制度を人口増の慣性に委ねたままでは重荷に押しつぶされる。与野党ともそれを意識して選挙戦に臨んでいるか。
国・地方の公共投資は年間二十三兆円。うち既存施設の維持更新、つまり修理などに使っているのは二割程度だが、十五年後には五割になるという。修理費に事欠けば廃墟が積み上がる。新しい施設の建設にお金を回し続ける余裕などない。
自民党のマニフェスト(政権公約)は「整備新幹線の着実な整備」をうたう。民主党は「国直轄の大型公共事業を五割を目標に削減」「道路特定財源の一般財源化」を公約した。これを見るかぎりは、自民党をぶっ壊すという首相の言葉も空念仏に聞こえる。
選挙後に発足する政権は財政・税制から社会保障や公共事業にいたるまで、あらゆる政策を人口減少仕様につくり直していかねばならない。
しかし、だからといって人口減を座視はできない。このままだと国力衰退を招く恐れが強いからだ。おのずと少子に歯止めをかける策も争点になる。伝統的な家族主義にこだわる議員の多い自民党が、育児支援税制など「社会全体で負担を分かち合うとの考え方」を明記したのは目を引く。
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投票にいけない未成年者やこれから生まれてくる世代の利害を考えることも、人口減次代の政治家の大切な仕事だ。
東京のJR渋谷駅のハチ公前広場。夏休み明けの始業式と重なった一日、自民党幹部が選挙カーから声を張り上げる傍らで未成年者を対象に模擬選挙が試行された。
行き交う高校生を呼び止め、実際に衆院選に立っている候補者に一票を入れてもらう。主催した特定非営利活動法人(NPO法人)ライツの林大介常務理事は「参政権を持たない人が政治を自らのこととして考えるきっかけになれば」と話す。
衆院選は政界そのものの若返りも着実に促す。五十歳未満の候補者の割合は民主党が六一%、自民党は三五%。ともに前回より多い。模擬選挙に参加した高校二年生は「もっと若い政治家に活躍してほしいと感じた」。
投票日まで約一週間。世代問題を訴えかける候補者がもっと増えるのは間違いない。
日本経済新聞 2005年9月3日 朝刊1面