模擬選挙の若者、社会人として
忙しくても 流されず一票
低い投票率が問題になっている若者に選挙に関心を持ってもらおうと、三年前から「未成年者模擬選挙」をしているNPO法人「Rights(ライツ)」(東京都港区)。模擬選挙に当初からかかわった若者は今春、社会人になった。「小泉劇場」ともいわれる今回の総選挙。「郵政だけで重要な課題が置き去りでは」「キャッチフレーズ優先の選挙でいいのか」。多忙な中でも慎重に一票を行使するつもりだ。
ライツは大学生が中心となり、選挙権年齢の引き下げを求めて二〇〇〇年に結成。模擬選挙は〇二年の町田市長選から始め、これまで国政や地方選挙で七回開催。昨年の参院選では未成年の約四千七百人が“一票”を投じた。今回の衆院選でも来月、首都圏の街頭や学校で模擬選挙を行う。
多摩市の元スタッフ林孝一さん(23)は今春、大学を卒業しコンピューターメーカーに就職。得意先を連日走り回る営業マンで、帰宅はたいてい深夜だ。「業界の人としか接しないから視野が狭くなった。若いサラリーマンの投票率が低い理由が今はよく分かる」とこぼす。
忙しくなって政治に関心が向かない毎日で、「郵政民営化の賛否を問う選挙だ」と単純化する小泉純一郎首相の呼び掛けは、「多忙な人にも分かりやすく、とっつきやすい」と感じる。だが「郵政民営化ばかりがクローズアップされ、年金や憲法改正の問題など重要施策が置き去りにされていいのか」と、危うさも感じる。
ライツ前代表理事で、今春から電機メーカーの営業マンになったさいたま市の三神尊志さん(24)も「仕事優先で、じっくり新聞を読むこともなくなった。世の中の動きに疎くなる」と嘆く。
週末、スタッフとのミーティングに時折、参加する。「後輩らと話していると刺激的。キャッチフレーズ優先の小泉流に乗せられないように気を付けなければ」と、郵政反対派の新党結成など話題先行の選挙戦に気をもんでいる。
ライツの初代代表で、三年間のサラリーマン生活を経て今春から宮城県で高齢者福祉施設の運営を始めた大友新さん(27)は「従業員を抱える立場になり、政治を考えることが多くなった。見過ごされがちな地域や福祉のために、一票を投じたい」と話している。
東京新聞 2005年8月23日 朝刊