変:05年総選挙 嘆くNGO 争点、郵政だけじゃない
◇公開討論の訴え、激戦理由に拒否も
郵政民営化だけが争点ではない--。立候補予定者による公開討論会の開催を支援する非政府組織(NGO)や、インターネットで各党の政策を紹介する活動をしている学生から、そんな声が上がっている。自民党による造反組つぶしの「刺客」が連日のように登場して、郵政民営化の賛否ばかりがクローズアップされているからだ。
NGO「リンカーン・フォーラム」は、96年から日本青年会議所と協力し、全国で公開討論会の開催を後押ししている。今回は衆院選全300選挙区のうち、現在のところ100選挙区で、討論会の実行委員会を組織した。だが、内田豊事務局長(40)は「自民党分裂で激戦区が増えて、候補予定者が『忙しい』と公開討論会に応じてくれないケースが多い」と嘆く。前回03年衆院選の97選挙区を下回る可能性もあるという。
内田さんは「郵政民営化以外にも、安全保障や憲法改正問題など争点はいくらでもある。有権者が政策の話を聞く場を候補予定者が拒否するのは残念だ」と語る。
各党のマニフェスト(政権公約)を比べたホームページ「seiron・政論」を運営するグループのメンバーで慶応大3年、村上弘さん(20)も「今のままだと人気投票になってしまう」とため息をつく。
このホームページは03年衆院選の前に、早稲田大や立命館大の学生らが「マニフェストが簡単に分かるように」と開設した。前回は「景気対策」など11項目を1テーマ500字で紹介した。今回は紹介する政策を「若者の雇用」「外交・安全保障」など14項目に増やし、マニフェストの要約を各党に依頼したが、今のところ応じたのは、公明、共産、社民の3党にとどまるという。村上さんは「20歳になり、国政選挙の投票は今回が初めてだが、治安、環境問題などの政策も選挙戦で戦わせるべきだ」と訴える。
未成年者の模擬投票を行っている非営利組織(NPO)「ライツ」は、模擬投票をしたことのある9都道府県の約30の中学、高校に対し、今回も実施してくれるよう18日に依頼した。03年衆院選は未成年者約2100人が“投票”したが、倍増を目指している。常務理事の林大介さん(29)は「700兆円を超える国の借金は将来の大きな負担となる。郵政民営化以外の政策もしっかり議論してほしい」と話している。【宍戸護】
毎日新聞 2005年8月20日 東京夕刊